実務翻訳ってなに?

実務翻訳とは、「出版翻訳」「映像翻訳」と並ぶ翻訳業界のジャンルのひとつです。

実務翻訳では、企業の経済活動や官公庁等のさまざまな活動が行われる際に発生する、
多岐にわたる文書を取り扱います。

非常に広範囲に及ぶマーケットですが、大まかに次のような分野に分けることができます。

・ビジネス全般
・機械・電気電子
・IT
・医学・薬学
・特許

また、実務翻訳は、「産業翻訳」や「技術翻訳」、「ビジネス翻訳」と呼ばれることもあります。

扱う分野が非常に広範囲にわたっていますので、
そのマーケットの大きさも翻訳業界全体の8割〜9割を占めていると言われています。

たとえば、マニュアルや新聞・雑誌の記事、パンフレットやカタログ、事業計画書、
プレゼンテーション資料、報告書、Webコンテンツ、各種レポート、学術論文、仕様書、
特許明細書、臨床試験の計画書などなど。

実務翻訳は、企業や官公庁などが国際活動を展開する際に必要不可欠なため
そのニーズは高く、リーマンショック以降、需要が落ち込んだとはいえ
最近はまた盛り返してきており、優秀な翻訳者さんには仕事が集中している状況です。

翻訳業界のなかでは、比較的収入面で安定しやすく、
仕事もたくさんあると言われる所以です。

機械翻訳が進化したら需要はなくなる?

入門レベルの講座やセミナーでよく聞かれる質問ですが、
実務翻訳というマーケットとしての需要がなくなることはないと
考えていただいてよいと思います。

機械翻訳の精度は確かに年々向上していますが、
それでも翻訳のプロセスすべてを任せられるほどのレベルには
ほど遠いと思います。

全体のプロセスのうち一部だけであれば、
翻訳の作業効率が向上する分野もありますし、
翻訳者にとってもありがたいツールとなっている側面もあります。

しかし、機械翻訳の弊害がないわけでもありません。
便利な分、使い方を誤ると翻訳の品質が著しく損なわれる可能性もあり、
もろ刃の剣であることを理解しておく必要があります。

また、マンパワー100%の翻訳を望まれるクライアントも多数存在するという事実もあります。

なぜなら翻訳とは、原文の単語をターゲット言語の単語へ
単に置き換える作業とはまったく異なるからです。

その文章が作られた背景や状況、前後の文脈など、言外の情報を読み取ったうえで
ターゲット言語の言葉で、正確に情報を伝えるには
やはり修練を積んだプロの技が必要だからです。

クライアントの意図や正しい状況判断に基づく翻訳を行えるのが
プロの実務翻訳者です。

優秀な翻訳者は常に引く手あまたです。
数か月先まで受注でいっぱい、という方もたくさんいらっしゃいます。

この先、機械翻訳が現在のものよりも進化したとしても、
機械翻訳がすべての翻訳の仕事を奪ってしまうのではとご心配される必要はないでしょう。


実務翻訳が求められている理由

こうしたことからもお分かりいただけるように、事実として実務翻訳には大量のニーズが存在します。

その大量のニーズに応えるためには、優秀な実務翻訳者が多数必要になるのですが、
安定した品質を維持し、クライアントから信頼される「優秀な」翻訳者は
ニーズに対して十分足りているとは言えないのが現状です。

その一方、SOHO翻訳者をウリに、プロになりきれていない「セミプロ」のような
格安の翻訳者が多数存在するのも事実です。

そして、そうした方々に驚くほど安い価格で一定の仕事が流れているという事実もあります。

しかし、格安で注文した翻訳物が使い物にならず、
困り果てた方から、お問い合わせをいただくこともあります。

本当に大切な文書や資料の翻訳を依頼したいと考えるクライアントは
翻訳物にプロの品質を求めます。

格安の海外の翻訳会社の台頭が目立つ一方、
品質を重視する翻訳会社が生き残っている理由はここにあります。

英語が得意というだけではプロの翻訳者にはなれません。
プロになるためのトレーニングを積んだ、実力のある翻訳者が求められているのです。

そして、優秀な翻訳者はほんの一握りという事実から、多くの翻訳会社は「優秀な」翻訳者を探し求めています。

実務翻訳は、映像翻訳や出版翻訳のように翻訳者の名前は表にほとんど出てきませんし、
経済活動を下支えする裏方としての役割が大きく、地味な印象があると思います。

しかし、実務翻訳のマーケットは、前述したように翻訳業界全体の大部分を占める非常に大きなものです。

大企業の経済活動だけでなく、中小企業や個人事業の国際的な活動を支える
大切な役割を担っています。

実務翻訳者は表舞台にこそ立たないものの、海外との何らかのやり取りを行う際に
なくてはならない存在なのです。

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